エンジニアドリブンとなったSixApartが生み出す「MovableType7」とデザイナー秘話を聞いてきた@MTDDC2017
MovableTypeといえば、言わずと知れたブログシステムの代名詞。ISPなどが提供するブログサービスの基盤となってきました。ぼくのイメージは、セキュリティを強みに法人向けでかっちりポジショニングしていると思っています。
そして、ついにVer7で、ブログシステムからCMS(コンテンツマネジメントシステム)へ進化するといいます。4年ぶりの開催となるMTDDCでの発表を聞いてきました。
- MTDDCのスライドはすべて公開されています
- モダンなデザインに進化するMovableType7
- CTOの平田さんから「生まれかわるMovavleType」
- MTのリードエンジニア高山さんから「詳説MovableType7」
- デザイン顧問の長谷川さんから「エンジニアと協働するためのデザイン的アプローチ」(一押し!)
- エンジニアの理想の職場から生まれるMovableType7
- 気になる2つの点(料金体系の変更と競合サービス)
- 個人的に期待したいMT7版のココログ
- メディア掲載記事
MTDDCのスライドはすべて公開されています
どう書こうかと思っているうちに、スライドはすべてSixApartの広報ブログで公開されました。
メディアで掲載された記事も網羅されています。
なので、少し違う角度からMTDDCの感想を書きます。
モダンなデザインに進化するMovableType7
公式テーマ名は「Jungfrau(ユングフラウ)」
MT7の公式テーマ、ユングフラウ。これまでの公式テーマ同様、山の名前から。
デザインは一気にモダンに進化しています。シンプルで洗練されていて、とてもMoableTypeらしいです。
MTDDCの登壇者はCTO、リードエンジニア、顧問デザイナー、製品担当の4名
MTDDCは「Movable Type Developers & Designers Conference」の略称です。
開発者(Developer)向けイベントなので、技術系メンバーから始まります。
CTOの平田さんから「生まれかわるMovavleType」
最前列のカメラマン勢に圧力を感じている模様です。
ブログを管理するのではなく、コンテンツを管理するために
Content Type(コンテンツタイプ)機能が搭載されます。
Ver7のキーワードは「コンテンツタイプ」
いままでの「記事(エントリー)」に相当する考え方です。
7のコンテンツの概念の説明が続きます。
具体的な画面を例として、コンテンツを分解すると。
個々の項目に分けることで、コンテンツの複製がしやすくなるそうです。
本日、10月6日は開発者向けのDeveloper Preview。
その後、Beta版の提供を経て、2018年4月にリリースが予定されています。
ブログ管理ツールからコンテンツ管理ツールへ進化すると、平田さんが宣言しました。
MTのリードエンジニア高山さんから「詳説MovableType7」
副題の「MovableType 7で始めるコンテンツとウェブの新しい関係」がいいです。
基本コンセプトもやはり「コンテンツ」がキーワードです。
Movable Type 7の基本コンセプト
- 効率的かつ効果的にコンテンツを利用できる
- 今するべきことを把握できる
- 様々な形式のコンテンツを管理できる
コンテンツの構成要素は、Entity、Content、Siteの3つ。
やはりコンテンツタイプ。
CTO、エンジニアと続き、デザインの話へ。
高山さんのパワフルさが印象的でした。
デザイン顧問の長谷川さんから「エンジニアと協働するためのデザイン的アプローチ」(一押し!)
個人的にはこのセッションが特に面白かったです。
MovableType7の開発秘話ならぬデザイン秘話として、デザイナーがエンジニアドリブンの組織でどう働くか、試行錯誤の経過が紹介されました。
タイトルの通り、MT7のデザインの話ではなく、Movable Type 7の開発におけるデザイン的アプローチの話です。
ユーザーとチームに理解してもらうために内と外のデザインを考える
そもそもデザインを内と外の両方があるところから。
- 外のデザイン:ユーザーが理解できるもの、必要だと思えるもの
- 内のデザイン:チームで理解できるもの、動き出せる関係性
特に、内のデザインで、チームを動かさなくてはいけないわけです。
SixApartの4つの特性
SixApartの特性は、
- 開発ドリブン
- スモールチーム
- ベテランのプロが多い
- 開発の進め方は成熟している
さて、デザイナーはどんなアプローチをするべきなのか?という話になります。
テーマというより
「開発ドリブンの組織でデザイナーはどうエンジニアドリブンな組織で働くか?」
と読み替えてもいいかもしれません。
- 視覚化は貪欲に、デザイン思考はほどほどに
- 思考のギャップを埋めていく
- プロセスをドキュメントしていく環境作り
デザイン思考的にカスタマージャーニーマップやペルソナを作ってみる
カスタマージャーニーマップやペルソナを作っても見たそうです。
こうしてグラフィックにしても
で、これが一体何なの?と反応されてしまう、と。
ここでのヒントは
正攻法が最適解ではない
ということです。
エンジニアを含む社内のメンバーと話をしていくなかで、相手によって様々なコミュニケーションをとる必要があるのだと思います。
例えば、部分的にプロトタイプ的なものを作るそうです。
作っては見てもらい、改善を加えていきます。
社内のメンバーも「ユーザー」と考えていくわけです。
デザイナーは俯瞰してエンジニアは細部から始める
このコミュニケーションの断絶の原因は、デザイナーとエンジニアの発想の違いだと言います。
図の通り、デザイナーは全体から詳細化していき、全体の整合性を崩さないようにします。一方で、エンジニアは具体的な細部を固め、そこから全体へ広げていきます。
個人的には、この違いの図と長谷川さんの一言が印象的でした。
「デザイナーがエンジニア寄りに動く」
このスライドにある通り、全体をデザインしきることはできません。
作りながら、実装しながら進めていく、という全体の整合性を大事にするデザイナーにとってはストレスがかかるかもしれません。
しかし、その先にMovableType7があるのでしょう。
エンジニアの理想の職場から生まれるMovableType7
昨年、SixApartは、従業員自らによる事業取得「EBO」によって会社のあり方を変えました。
そして、その結果として「SAWS(サウス)」(「Six Apart(SA)らしい、Working Style を実践する」)という働き方を採用しています。
シックス・アパートの全社員は、全ての勤務日において、それぞれのライフスタイルや住んでいる場所、その日の業務内容にあわせて自由な場所で働くことができます。たとえば、小さな子供がいる社員は、通勤の必要がない自宅勤務に切り替えることで、家族のための時間を増やせます。近所のコワーキングスペースに拠点を置きつつ、外出の多い日は最寄りのカフェで働くなど、それぞれが自分に合った働き方を選べるようになります。
これもまたエンジニアを含む社員の生産性を上げるために議論して選んだ選択と聞きます。
エンジニアドリブンな組織がMovableType7をどういうプロダクトに仕上げるか、とても楽しみです。
気になる2つの点(料金体系の変更と競合サービス)
今回、年間メンテナンスという費用が加わります(
Movable Type 6 のライセンス販売、ベータ提供を開始します | Movable Type ニュース
によれば、MT6にはなかったようです)。
Movable Type 7 以降のバージョンに適用される、Movable Type ソフトウェア版用のメンテナンスです。最新バージョンのダウンロードとメールによるテクニカルサポートが提供され、1年毎に更新することでメンテナンスが継続されます。
30,000円という金額ですが、継続的な費用の発生になります。マンスリーのレポートやユーザー事例の共有など、PUSH型のサポートやユーザー活性化もしてくれるとうれしいです。
そして、もう一つ聞いなるのは、競争サービスの存在です。
MovableTypeの企業シェアは十分に高いです。
企業においては、日経平均株価構成銘柄 225社の50%以上、東証一部上場1935社の30%以上に選ばれています。
また、国内の大学においては、国立大学86校の65%以上、私立も含む国内の全779大学では35%以上にご利用いただいています。
法人向けマーケットでもWordpressほかのCMSが増えているかもしれません。
あまり意識せず既存のMovableTypeユーザーをがっつり掴んでほしいです。
それぞれのマーケットで求められるプロダクトは異なります。
MovableTypeには、今後ますます重要になるセキュリティの強さを揺るがないものにして欲しいです。
個人的に期待したいMT7版のココログ
イベントレポーターでも、マーケターでもなく、一個人としての要望です。
@niftyのココログをMT7ベースにして、復活させてほしいです。
現状、ココログのシステム面がどうなってるか、まったく知らないのでトンチンカンかもしれません。
これまでのコンテンツを移管できなくても、有料でもいいので、ココログにいま一度活気を与えてほしいです。