林望『文章術の千本ノック』で「品格」ある文章を書けるようになれるか?
「どうすれば品格ある日本語が書けるか。」
副題の問いかけは、タイトルの『文章術の千本ノック』を上回る衝撃がありました。
ときどき「年相応の文章を書いたら?」と言われるので気になっていたんです。
もしかして、ぼくの文章は軽薄なのかと…。
この本を読んだら「品格」ある日本語を書けるようになるのかもしれない。
期待を込めて読み始めました。
- 序文から「お金と文章はけちなほどいい」
- エッセイとは「論理的文章」
- 文章のヘソを作る、書き出しと締めくくりと三つのキーワード
- 文章の品格は「文体と言葉の選び方」
- ユーモアある文章は「自分」の扱いで決まる
- 悪口を書きたくなったときの秘策
- 品格ある日本を書くには品格ある日本人になれ
- 参考(他の方のレビュー)
林望氏は『イギリスはおいしい』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞
著者の林望(はやし のぞむ)氏は、1949年生まれ。作家で、書誌学者。
「リンボウ先生」という愛称で知られ、『イギリスはおいしい』等でエッセイ関連の受賞歴をお持ちです。
本書は、2002年に企画・実施された特別授業「リンボウ先生の表現講座」をもとに書き下ろされました。語りかけるような文体なので、教室で授業を受けている気分になります。
本書の構成は3部構成
品格ある日本語の答えは、当然第一部にあるでしょう。
第一部は序文以外で10に分かれています。特に気になるところを太字にしてみました。
序 文字を惜しめ
- 文章の第一要件は「客観性」にあり
- エッセイと観察
- 論旨と叙述の方法
- 文体の問題
- テーマと寸法
- 文章のヘソ
- 文章の訓練
- 文章の品格
- 文章とユーモア
- 悪口は書くな
8の「文章の品格」に品格ある日本語の答えがありそうです。
品格が上がりそうな箇所を紹介します。
序文から「お金と文章はけちなほどいい」
「お金と文章はけちなほどいい。」
序文「文字を惜しめ」の結論は、この一文です。本当に伝えたい内容だけに文章を削れ!という一言に、ぐさっときます。
著者によれば、アマチュアの文章はとにかく伝えたい内容以外のものが含まれているので、とにかく削れと言います。
でも、書いているうちに、何か閃いて「あれ」も追加しよう、「これ」も追加しよう、となった経験があります。「閃き」はどうすればいいのでしょう?
さらに読み進めてみます。
エッセイとは「論理的文章」
一言で言えば「論理的文章」と定義をしたらいいと思います。だから、論理のない文章はエッセイとは言わないんです。
有名人の「初のエッセイ集」といった類の本を手に取ると、普通の日常を描いているので、エッセイは日記みたいなものだと思っていました。
いわゆる身辺雑記はエッセイとは言わないと著者は断言します。しかも、エッセイどころか「エセもの」とまで切り捨てます。
実に、すっとします(笑)。
文章のヘソを作る、書き出しと締めくくりと三つのキーワード
書き出しの一行で読者の心をひきつけて、締めくくりで読者が思いをかけないところに落とすか、混沌していたものを論理で締めくくるそうです。
そして、文章が書き出しから締めくくりまでたどり着けるよう、書き出す前に「三つのキーワード」を決めておきます。
このキーワードを決めておくことで、書いている途中に浮かんだ思いつきを入れるのを防ぐのです。
今後、この「3つのキーワード法」を使ってみます。
文章の品格は「文体と言葉の選び方」
文章の品格は、文体や言葉の選び方に現れると言います。
品格がないものとして、3つの注意点があげられています。
- しり切れトンボ的文体:「〜してみては?」「〜してみるのもいいかも。」
- 体言止め:たまに使うならいい。
- 手垢の付いた表現の安易な使用:「〜と思っているきょうこのごろ。」「〜にハマっている。」
ぼくは、まさに3つ目の「手垢の付いた表現」を安易に使っています。
例えば、品格ある日本語には「ハマっている」はありえない表現で、「こだわっている」を使うそうです。
最後の一文が素敵でした。
なんとかして自分独自の表現で、ちゃんと描写したいという志が、文章に品格をもたらすのであります。
細かい文体や言葉の選び方より、「志」という言葉に勇気をもらいました。
ユーモアある文章は「自分」の扱いで決まる
生きていくうえでユーモアは欠かせない要素だと思います。当然、文章に盛り込めるようになりたいです。
著者の指摘は3点です。
- 自分が楽しんではいけない
- 自分をからかっていい
- 人を笑いものにしない
本書で書き手に求めることの一つが「客観性」です。
自分の気持ちや論理を書きながらも、相手に伝わるためには客観的に思考しなければならないのです。
お笑い番組で自分のネタにウケまくる芸人がいたら、視聴者側は置いてけぼりになりそうです。
悪口を書きたくなったときの秘策
嫌なやつに対して何か書きたくなったら、一番正しい態度は何も書かずに黙殺するということです。一切書かないのがよろしい。
シンプルな結論です。
「嫌なやつ」が相手だと感情的になってしまいそうですが、ぐっと我慢して口にしないのが、品格ある日本語なのです。
「無視」するのも感情的ではありますが、理性でコントロールできるのが品格あるひとなのでしょう。
品格ある日本を書くには品格ある日本人になれ
タイトルには「文章術」とありますが、著者の求める文章を書くには「人間性」を高める「人間術」が必要そうです。
副題の
「どうすれば品格ある日本語が書けるか」
は、
「どうすれば品格ある日本人になれるか」
と読めてきました。
簡単ではありませんが、文章を書く際に心がけていこうと思います。
参考(他の方のレビュー)
girlsf.jp新しい本ではありませんが、最近のレビューが上がってました。