上場直後のマネーフォワード辻庸介社長と日経FinTech原隆編集長の対談を聞いてきた@FinTech2017(ITproEXPO2017)
先日上場したばかりのFintechの雄、マネーフォワードの辻庸介社長(代表取締役社長CEO)に、日経Fintechの原隆編集長がインタビューする形式の特別講演「上場マネーフォワード、FinTechの未来をどう描く?」を聞いてきました。
(FIntech2017を含む、ITproEXPO2017は2017年10月11日から13日まで、東京ビッグサイトで開催されました。)
講演中の撮影禁止とのことで、講演前に撮影。
- マネーフォワードとは
- 海外進出には覚悟がいる。勝ち筋を探している。
- 「Fintech企業としてどこに注目して進出する国を選ぶか?」
- インドネシアは調査している。
- Fintechに必要な2つのポイントを提供できるか
- 「アジア。上海(深圳?)に行ったあと、ニューヨークに行ったら古臭く感じるほど、アジアはすごい。」
- 当時はほかのメンバーに「選択と集中」って知ってますか?と言われた(笑)
- マネーフォワードの一番の強さはユーザーの使いやすさ
- 気になる金融機関によるAPI公開の影響
マネーフォワードとは
マネーフォワードの社長、辻庸介氏は、ソニー、マネックス証券を経て、2012年にマネーフォワード(当初、マネーブック)を起業。
サービスは、個人向けと法人向け。
個人向けは「自動家計簿サービス Moneyfoward」(利用者 550万人)とリリースしたばかりの「自動貯金サービス しらたま」。
sirata.ma法人向けはクラウド会計を中心とした「MFクラウド」シリーズ。
サービス紹介のあと、企業としての活動をいくつか紹介。
- 金融機関とのパートナーシップ
- 社外取締役に元LINEの森川亮氏、BCGの御立尚資氏らの協力を得ていること
- 元日本銀行(金融庁でFintech領域を担当)した神田潤一氏が入社
- CAMPFIRE、LIFULL Social Fundingと資本業務提携(クラウドファンディング)
- 千葉銀行・北洋銀行ほかと参照系API提携
現在社員は200名程度。うち、4割がエンジニアとのこと。
海外進出には覚悟がいる。勝ち筋を探している。
(お二人のやりとりは物腰やわらかでしたが、記事をまとめる都合上、編集させていたただきました。また、メモをもとにしているので間違っている箇所があるかもしれません。あらかじめご了承ください)
まず原編集長は上場による時価総額550億円をどこへ投資していくのか?という点から、海外展開の可能性を聞きました。
辻社長
「ソニーのファンダーの著書『盛田昭夫』に海外進出の話が出てくる。海外進出の際、家族ごと海外に住んでいる。
海外進出には覚悟がいる。(マネーフォワード)創業時のように腹をくくらなかればならない。
もちろん中長期の成長には海外進出が必要。」
原編集長
「Fintech企業としてどこに注目して進出する国を選ぶか?」
辻社長
「マクロ的には人口やGDP、金融面では規制。ベンチャーとしては「カスタマーペイン」に注目。
国によって(求められる)Fintechは異なる。アメリカは銀行が嫌われていて、利用者に不信感を持たれている。
一方、日本の金融サービスはよくできているし、信頼されている。また新興国は銀行口座自体が普及していない国もあり、各国の事情は異なる。」
原編集長
「具体的に注目している国はあるか?」
辻社長
インドネシアは調査している。
「(実際、行ってみたが)無茶苦茶面白い。例えば、緑色のバイクを使ったUberのバイク版のようなサービスがある。お金を借りてバイクを買う。お金を返さないと、バイクが動かなくなる。IoTの活かし方が面白い。
いまのプロダクトを海外に持っていくのではなく、持っていく先にあったプロダクトが必要。
Fintechに必要な2つのポイントを提供できるか
-
コストが圧倒的に安くなるか(既存のサービスの10分の1)
- 圧倒的な価値を提供できるか
勝ち筋がどこにあるか、社内ではよく話している。」
原編集長
「アメリカ、ヨーロッパ、アジアから選ぶとしたらどこへ?」
辻社長
「アジア。上海(深圳?)に行ったあと、ニューヨークに行ったら古臭く感じるほど、アジアはすごい。」
原編集長
「上場によるマーケットからの期待に対してどう答えていくか。儲かる法人向けだけにしろ、という圧力はないか?個人向け、法人向けの両方をやる意味は?」
辻社長
「当社のサービスは個人向けから始めた。法人向けはユーザーへのヒアリングから得た「確定申告を楽にしたい」という要望から生まれた。
当時はほかのメンバーに「選択と集中」って知ってますか?と言われた(笑)
「人と金は連れてくるからやらせてくれ」と言って始めた。
また、サービスの中心になるアカウントアグリゲーションは、個人・法人に共通して利用できる。」
原編集長
「明日、最初の決算。Saas型の先行投資で赤字での上場。いつ黒字化するか?」
辻社長
「当社はFintech企業として初の上場であり、Saasモデルとしても珍しい。
Saasモデルは利用者の増加によって(売り上げが積み上がっていく)右肩上り。自分たちが想定した右肩あがりで快適な投資になっている。
当社のような銘柄が出てくることで、新しいベンチャーが出てくるといい。
また、上場によってVCに恩を返せてほっとした。」
※在シリコンバレーの起業家による、SaaSのIPOに関するレポートです。有料(500円)。
原編集長
「クラウド会計の分野は、もともとパッケージの会計プレイヤーがいた業界。彼らのクラウド化の動きもある。マネーフォーワードの強みはどこにある?」
辻社長
マネーフォワードの一番の強さはユーザーの使いやすさ
「会計サービスをやっているつもりはない。
クラウドで設計することで、経営のPDCAサイクルができること。
またMFクラウドは連携先も多い。
開発陣の持つ開発力とUXを活かして、使いやすいプロダクトにこだわる。」
原編集長
「サービスのラインアップは?どう拡大していくのか?」
辻社長
「当社だけでやる必要はない。さまざまなサービスと連携すればいい。例えば、勤怠のニーズが強い。
サービスが拡大すればデータが増える。人工知能を使って、顧客が気づかないことを見いだせればさらに価値が上がる。」
原編集長
「エンジニアたちはどういった領域に関心があるか?」
辻社長
「ブロックチェーン、ビットコイン、ICOも社内では盛り上がっている。
ただし、ブロックチェーンは、コストが安くなる分散型の仕組みであり、(自社がプラットフォームを提供する側になるのではなく)使う側と思っている。
最近、エンジニア合宿を行った。2日間それぞれが好きなもの、プロトタイプを作る。大変盛り上がった。」
原編集長
「UXやUIがますます注目されている。AmazonのEchoなど、音声入力は?」
辻社長
「もちろん興味はある。顔で送金できても面白い。
アメリカのような無粋なスピーカーではなく、日本のデザインにチャンスがあるのでは。」
以上で対談は終了しました。
なお、イベント公式の記事がありました。
また、10月13日に行われた決算説明会の書き起こしもありました。
気になる金融機関によるAPI公開の影響
銀行口座などの情報を集約するアカウントアグリゲーションサービスは、これまで参入障壁が高いものでした。スクレイピングという技術を用いて、各社の口座情報の画面を分析して集約しなければならず、各社のサイトの変更に合わせる必要がありました。
しかし金融機関がAPIによって口座情報を公開すれば、スクレイピングは不要になります。
アカウントアグリゲーション事業への参入企業が増える可能性があるわけです。
もちろん、金融機関がどういったルールでAPI連携を認めるかにもよりますが。
そのあたりを聞いて欲しかったです。
その点を指摘している開発者のかたもいます。
さて、次のFintech企業の上場はどこの会社になるでしょうか。
なお、このイベントは撮影禁止とのことで、文字ばかりになってすみません。
撮影可能ならSNSで拡散されてイベントの集客にもなると思うのですが。
日経BPさん、どうでしょう?